2011年法律改正情報
【2011年通関士試験に関連する法改正のポイント】
ここでは、4月1日から改正予定のもの、7月1日までに改正があると思われるためにその動向に注意が必要なもの、 10月1日改正予定のものに分けて紹介します。
4月より改正予定:特恵関税「シーリング方式」の廃止。
特恵関税制度とは、特恵受益国(開発途上国のうち我が国において特恵供与を希望する国で政令で定める国)の 原産品の輸入については、関税率を無税あるいは、通常より低い税率を適用する制度である。
これにより、我が国の特恵受益国からの輸入を増やし、特恵受益国の経済を間接的に援助しようとするものである。
もっとも、特恵関税の供与は、我が国の産業を犠牲にしてまで行われるわけではない。 これまで、特恵供与は、 エスケープクローズ方式とシーリング方式という2つの方式により行われてきた。エスケープクローズ方式は、 農水産物、鉱工業産品(特定特恵鉱工業産品を除く)に対し、また、花火、革製品、ベットリネンなどの 特定特恵鉱工業産品に対しては、シーリン方式により特恵が供与されてきた。 エスケープクローズ方式は、特恵供与により輸入が増加して本邦の産業に損害を与えるような事態になった場合に 特恵供与を停止する方法である。 一方、シーリング方式とは、特恵供与する輸入額や数量を品目別にあらかじめ設定する方式である。 今回、法律案が国会を通過すれば、4月よりシーリング方式による特恵供与は、廃止され、 エスケープクローズ方式一本になる。
動向を注意する必要があるもの
7月1日現在において改正されている可能性があるもの
(1)アクセスコントロール等回避機器の輸出入禁止品の追加
現在、関税法に定める「輸入してはならない貨物」および「輸出してはならない貨物」に不正競争防止法2条1項1号から 3号の行為を組成する物品が規定されている。 具体的には、周知表示混同惹起行為、著名表示冒用行為、商品形状摸倣行為を組成する物品である。
これらに加え、不正競争防止法改正が国会でなされた場合には、技術的制限手段(アクセスコントロール及びコピーコントロール) を回避する行為を組成する物品(技術的制限手段回避装置等)が加わることなる。これらは、DVDや衛星放送など無断コピーや 無断アクセスをさせないような技術を用いているものに対し、その技術を無効にし、コピーやアクセスが出来るようにする機器のことで、 ニンテンドーDSのアクセスコントロールを回避して違法な海賊版ゲームソフトを作動させる「マジックコンピュター」 装置や不正チューナーなどがその例である。その目的は、コンテンツ提供事業者の存立基盤を確保するところにある。
つまり、
①視聴等機器技術的制限無効化行為(同法2条1項10号)を組成する物品
②視聴等機器技術的制限特定無効化行為(同法2条1項11号)を組成する物品が輸出入してはならない貨物に加わる
ということである。
なお、①と②の違いは、「特定」という文字が入っているかいないかであるが、簡単に言うと、①は、DVDのコピーガードを解除する 違法キャンセラーなどが規制対象され、②は、CATVや衛星放送など「特定の契約者」に対する提供を目的としているものに対し、 契約者以外が見ることが出来るような施しをしたチューナーを規制対象としている。
(2)更正および更正の請求ができる期間の改正
税関長の行う更正及び納税申告者の行う更正の請求ができる期間が内国税の改正及び適用日に合わせて延長される。 税関長が更正を行うことのできる期間は、法定納期限などから3年とされているが、これが、5年に延長される。
また、関税の更正の請求は、「輸入許可があるまで又は、当該輸入許可の日から1年以内」、特例申告の場合は、「特例申告書の提出期限から1年以内」、輸入許可前貨物の引き取り承認を受けた貨物については、「承認の日の翌日から起算して1年を経過する人と輸入許可の日のいずれか遅い日までの間」に行うことができるとされていた。 これも、1年がすべて5年に延長される。