2022年法令改正情報
【注意】
令和4年度通関士試験は、今年7月1日時点で施行されている法令に基づき実施されます。
意匠権、商標権侵害物品に対する改正は、今年7月1日時点で施行されていませんので、試験範囲外です。したがって、改正情報には掲載しておりません。(関税法69条の11第1項9号、9号の2、同法69条の12等に係る部分)
関税法等
(1)通い容器の免税手続の簡素化
・通い容器の再輸入免税の場合
【従来】
関税定率法14条10号(再輸入免税)の規定により関税の免除を受けようとする貨物の輸入申告の際には、当該貨物の輸出の許可書又はこれに代る税関の証明書を提出しなければならない。
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【改正後】
輸出の許可書又は証明書の提出が不要となる例外を規定
①貨物が他の資料に基づき明らかであるとき
②再輸入免税の適用を受ける容器で特定輸出者によって輸出されたものであって、特例輸入者によって輸入されるものであるとき(関税定率法施行令16条)←重要
・再輸出免税の場合
【従来】
輸入時の手続き(定率法施行令34条1項、2項)が必要
輸出時の手続き(定率法施行令39条1項、2項)が必要
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【改正後】
上記の免税手続が免除となる例外を規定
=再輸出免税の適用を受ける容器であって特例輸入者によって輸入されて特定輸出者によって輸出されるものであるとき
(2)NACCSを使用して行える手続き範囲の拡大
・下記手続に係る業務をNACCSを使用して処理することが可能に。
①入国旅客の携帯品などに対する関税、消費税等の徴収
②非居住者が、輸出物品販売場などにおいて消費税などの免除を受けて(輸出する予定で)購入した物品について、輸出しないこととなった場合の消費税などの徴収
③入港手続きにおける船舶国籍証明書等の提示及び荷受人による郵便物以外の積荷に関する事項の報告
(3)特例基準割合(令和4年1月1日~12月31日)
・特例基準割合の名称変更
地方税法の改正により、適用対象に応じた固有の特例基準割合の名称(延滞税特例基準割合、猶予特例基準割合等)が定義される。
・租税特別措置法93条2項の規定に基づく、令和4年の平均貸付割合の告示⇒0.4%
・各特例基準割合について
①延滞税特例基準割合
延滞税特例基準割合=平均貸付割合+1%=1.4%
令和3年=1.5%➡令和4年1.4%
・延滞税率(7.3%の部分)
令和4年=延滞税特例基準割合+1%=2.4%
・延滞税率(14.6%の部分)
令和4年=延滞税特例基準割合+7.3%=8.7%
e・g・計算問題の場合、例年「…延滞税の税率は、年2.4%(当該関税の納期限の翌日
から2月を経過する日後は年8.7%)として計算するものとする」というような指示があ
る。
②猶予特例基準割合
猶予特例基準割合=平均貸付割合+0.5%=0.9%
e.g.延滞税額の2分の1が免除される場合
・滞納処分の財産の換価を猶予した場合
・不服申立てにより関税の徴収に関する処分の執行停止をした場合
・差押えをし、又は担保の提供を受けた場合
➡納期限の翌日から2月経過する日以後において、一定の期間に対応する延滞税額のうち猶予特例基準割合により計算した特例延滞税額を超える部分が免除の対象になる。
③還付加算金特例基準割合
還付加算金特例基準割合=平均貸付割合+0.5%=0.9%
(4)関税暫定措置法3条
これまでの関税暫定措置法3条が削除され、同法3条が新設されました。
旧関税暫定措置法3条 削除
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国際関係の緊急時に特定の国を原産地とする物品に課する関税率
第3条1項
国際関係の緊急時において、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定附属書一Aの千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定(以下「一般協定」という。)による関税についての便益を与えることが適当でないときは、政令で定める国(その一部である地域を含む。)を原産地とする物品で政令で定めるもので、政令で定める期間内に輸入されるものに課する関税の率は、関税法第三条ただし書(課税物件)の規定にかかわらず、関税定率法第三条(課税標準及び税率)の規定(前条の規定の適用があるときは、同条の規定)によるものとする。
2項
前項の政令を制定し、又は改廃する場合においては、政令の制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
(5)輸出貿易管理令
ロシア、ベラルーシ及びウクライナのドネツク州及びルハンスク州の区域のうち経済産業大臣が告示で定める区域を仕向地とする輸出について新たに規制が講じられた。
ロシア向けの輸出の場合、仕向先が特定団体(軍事関連団体)、たとえば、ロシア国防省、ロシア航空メーカーなどである場合は、そもそも輸出は禁止され、それ以外の仕向先である場合で、輸出貿易管理令別表2の3(新設)に掲げる貨物を輸出する場合には、経済産業大臣の輸出承認を受ける必要がある。ただし、輸出承認は、ごく例外を除きされない。
参考:輸出貿易管理令別表2の3(抜粋)
1号 別表1の1から15までの項の中欄に掲げる貨物
2号 次に掲げる貨物であって、経済産業省令で定めるもの
イ 集積回路、アナログデジタル変換器、マイクロ波用機器及びミリ波用機器の部分品、弾性波を利用する信号処理装置及びその部分品、一次セル、二次セル、太陽電池セル、超電導電磁石、超電導材料を用いた装置並びに放電管
ロ 電子式の試験装置、アナログ方式又はデジタル方式の記録装置並びにオシロスコープ及びその部分品
ツ レーダー及びその部分品
ミ 集積回路から蓋及び封止材料を除去するための装置
2号の2 次に掲げる貨物であって、経済産業省令で定めるもの(前2号に掲げる貨物を除く。)
ロ 鉄鋼製の貯蔵タンクその他これに類する容器
ニ ボイラー及び機械類並びにこれらの部分品及び附属品のうち、次に掲げるもの
(1)蒸気発生ボイラー及び過熱水ボイラー並びにこれらの部分品
(30)電子式計算機の部分品及び付属物
ホ 電気機器及びその部分品のうち、次に掲げるもの
(1)直流電動機、発電機及びロータリーコンバーター
(14)粒子加速器
へ 鉄道用機関車、炭水車、鉄道又は軌道の保守用又は作業用の車両及び無蓋車
ト 鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品のうち、次に掲げるもの
(1)貨物自動車
(4)トレーラー及びセミトレーラー
3号 次に掲げる貨物であって、経済産業省令で定めるもの(前3号に掲げる貨物を除く。)
イ アルコール飲料及びエチルアルコール
ホ 毛皮製のオーバーコートその他の毛皮製品
リ スキー靴、スポーツ用の履物その他の履物
レ 腕時計、懐中時計その他の携帯用時計(ストップウォッチを含み、ケースに特定金属又は特定金属を張った金属を使用したものに限る。)及びその部分品
ソ グランドピアノ
※なお、このほか、機械類、ウオッカなどのロシアからの輸入も禁止されている。
通関実務 2022HSコード改正
令和4年(2022年)1月1日より、HS2022改正が施行。
第4類 酪農品、鳥卵、天然はちみつ及び他の類に該当しない食用の動物性生産品
①「ヨーグルト」
第4類のヨーグルトの範囲がこれまでは、制限されていたが、2022年より、シリアル、コーヒー、コーヒーエキスなどが添加されたヨーグルトも第4類に分類するように改正された。
注
1 「ミルク」とは、全乳及び部分的又は完全に脱脂した乳をいう。
2 第04.03項においてヨーグルトは、濃縮し又は香味を付けてあるかないかを問わず、 砂糖その他の甘味料、果実、ナット、ココア、チョコレート、香辛料、コーヒー若しく はそのエキス、植物若しくはその部分、穀物又はベーカリー製品を加えてあるかないか を問わない。ただし、ミルクの組成分の一部又は全部を置き換えるためにこれらの物品を加えたものではなく、かつ、ヨーグルトの重要な特性を保持しているものに限る。
(以下省略)
②「食用の昆虫類及びその調製品」
食用の昆虫類は、第4類に、その調製品は、第16類に含まれることとなった(これまでは、明確な分類が存在しなかった)。第2類(肉及び食用のくず肉)には含まれないことが、明確に規定された。
【参考】
類注 (前後省略)
6 第04.10項において「昆虫類」とは、食用の生きていない昆虫類(全形のもの又は部分的なもので、生鮮のもの及び冷蔵し、冷凍し、乾燥し、くん製し、塩蔵し又は塩水漬けしたものに限る。)並びに昆虫類の粉及びミールで食用に適するものをいう。ただし、 同項には、その他の方法により調製をし又は保存に適する処理をしたものを含まない(主として第4部に属する。)。
なお、「第4部に属する」とは、「第16類に属する」という意味にとらえてよい。
この注により、調製された昆虫は、第16類、そうでない昆虫は、第4類と棲み分けが明確になった。
第10類 穀物
③「キヌア」
キヌアとは、南米において栽培されるホウレンソウなどと同科の植物で第10類雑穀に属する。しかし、第10類は、殻の除去をしたもの、加工したものは、含まないとされていた。一方、キヌアは、この殻(サポニン層)の除去や加工にあたることが施されているか、肉眼では、判断が困難なところからサポニン層の除去の有無にかかわらず、統一的に第10類に分類することになった。→(第1008.50号)
15類 動物製、植物製又は微生物性の油脂及びその分解生産物、調製食用脂並びに動物製又は植物性のろう
④「微生物の油脂」
第3部の表題、第15類の表題が「動物性又は、植物性の油脂及びその分解生産物、調製食用脂並びに動物性又は植物性のろう」から「動物性又は、植物性又は微生物性の油脂及びその分解生産物、調製食用脂並びに動物性又は植物性のろう」と変更された。これにより微生物由来の油脂の分類が明確化された。
そして、例えば第15.15項のように微生物由来油脂の記載がされている。
その他の植物性油脂又は微生物性油脂及びこれらの分別物(ホホバ油及びその分別物を含み、化学的な変性加工をしてないものに限るものとし、精製してあるかないかを問わない。したがって、試験対策的には、「微生物由来油脂は、第15類に含まれる」と覚えておく。
⑤「ココアを含有する調製品」
ココアを含有するチリシチュー(牛肉70%)は、第16類にも第18類にも分類可能であった。また、ココアを含有するパスタは、第18類にも第19類にも分類可能であった。
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改正により次のように分類するようになった。
ココアを含有するチリシチュー(牛肉70%)⇒第16類
ココアを含有するパスタ ⇒第19類
第24類 たばこ及び製造たばこ代用品、非燃焼吸引用の物品(ニコチンを含有するかしないかを問わない。)並びにニコチンを含有するその他の物品(ニコチンを人体に摂取するためのものに限る。)
⑥「加熱式たばこ、電子たばこ」
電子たばこ⇒85類(電子たばこ及びこれに類する個人用の電気的な気化用器具)
⑦「ニコチンを含有する禁煙補助用の物品」
ニコチンを含有する禁煙補助用の物品(錠剤、チューインガムパッチ)は、第24.04項に分類される。
第30類 医療用品
類注
1 この類には、次の物品を含まない。
⒜ 食餌療法用の食料、強化食料、食餌補助剤、強壮飲料、鉱水その他の飲食物(静脈 注射用の栄養剤を除く。)(第4部参照)
⒝ ニコチンを含有する喫煙者の禁煙補助用の物品(例えば、錠剤、チューインガム及 びパッチ(経皮投与剤))(第24.04項参照)
(省略)
(ij) 第 38.22 項の診断用の試薬
(以下省略)
第30類 医療用品
⑧「第30類医療用品」
次の物品は、それぞれ第30類「医療用品」に属することを明確にした。
細胞培養物(細胞治療製品)(3002.51)
プラセボ (3006.93)
第38類 各種の化学工業生産品
⑨「マラリアその他の診断試験キット、血液型判定用試薬」
マラリアその他の診断試験キット、血液型判定用試薬は、これまでの第30類(医療用品)から第38類(各種の化学工業生産品)に移動した。
第57類 じゆうたんその他の紡織用繊維の床用敷物
⑩「人工芝」
人工芝は、第57.03項に分類されることを明確化した。
(参考)
第57.03項 じゆうたんその他の紡織用繊維の床用敷物(人工芝を含み、タフトしたものに限るものとし、製品にしたものであるかないかを問わない。)
第61類 衣類及び衣類附属品(メリヤス編み又はクロセ編みのものに限る。)
第62類 衣類及び衣類附属品(メリヤス編み又はクロセ編みのものを除く。)
⑪「シャツ、シャツブラウス及びブラウスの定義」
第61類、第62類ともそれぞれ注4を新設しシャツ、シャツブラウス及びブラウスの定義を明確にした。
第61類 衣類及び衣類附属品(メリヤス編み又はクロセ編みのものに限る。)
注1~3省略
4 第61.05項及び第61.06項には、ウエストより下の部分にポケットのある衣類、裾に ゴム編みのウエストバンドその他の絞る部分がある衣類及び少なくとも縦10センチメー トル、横10センチメートルの範囲で数えた編目の数の平均値が編目の方向にそれぞれ1センチメートルにつき10未満である衣類を含まない。第61.05項には、袖無しの衣類を 含まない。
「シャツ」及び「シャツブラウス」とは、長袖又は半袖を有し、ネックラインが一部又は全部開いている上半身用の衣類である。「ブラウス」とは、上半身用のゆったりした衣類であり、袖無し及びネックラインが開いているものであるかないかを問わない。「シャツ」、「シャツブラウス」及び「ブラウス」は、襟を有するものを含む。
(以下少略)
第62類 衣類及び衣類附属品(メリヤス編み又はクロセ編みのものを除く。)
注1~3省略
4 第62.05項及び第62.06項には、ウエストより下の部分にポケットのある衣類、裾にゴム編みのウエストバンドその他の絞る部分がある衣類を含まず、第62.05項には、袖無しの衣類を含まない。
「シャツ」及び「シャツブラウス」とは、長袖又は半袖を有し、ネックラインが一部 又は全部開いている上半身用の衣類である。「ブラウス」とは、上半身用のゆったりした衣類であり、袖無し及びネックラインが開いているものであるかないかを問わない。「シャツ」、「シャツブラウス」及び「ブラウス」は、襟を有するものを含む。
(以下省略)
第84類 原子炉、ボイラー及び機械類並びにこれらの部分品
第85類 電気機器及びその部分品並びに録音機、音声再生機並びにテレビジョンの映像及び音声の記録用又は再生用の機器並びにこれらの部分品及び附属品
⑫「太陽熱温水器、太陽光発電機、太陽光発電に使用するセル、モジュール又はパネル、ソーラー照明」
太陽光により発電する機器を特掲した。
太陽熱温水器 第84類
太陽光発電に使用する光電池(セル、モジュール又はパネル) 第85類
太陽光発電機 第85類
ソーラー照明(発光ダイオード(LED)光源とともに専ら使用するように設計されたものに限る。)第94類
⑬「3Dプリンター(積層造形用の機械)」
3Dプリンターは、第84類(84.85)に分類されることになった。それに伴い類注及び84.85が新設された。積層造形用の機械とは、いわゆる3Dプリンターのことである。
⑭「スマートフォン」
スマートフォンは、第8517.13号に分類することが明確になった。それに従って、類注などが新設された。
87類 鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品及び附属品
⑮「自動車の窓(車用のフロントガラス)」
従前の自動車用の安全ガラス(第70類)と自動車用の部分品及び付属品(第87類)との境界を明確にするために第70類と第87類にそれぞれ注を新設し、車用のフロントガラスは第87類に分類することになった。
(参考)
第70類 ガラス及びその製品
注
1 この類には、次の物品を含まない。
⒜ ~⒞省略
⒟ フロントガラス(風防)、後部の窓及びその他の窓(枠付きのもので、第 86 類から 第 88 類までの物品用のものに限る。)
⒠ フロントガラス(風防)、後部の窓及びその他の窓(枠付きであるかないかを問わず、 加熱装置又はその他の電気的若しくは電子的装置を自蔵する第 86 類から第 88 類まで の物品用のものに限る。)
⒡ ~(ij)省略
第87類 鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品及び附属品
号注
1 第8708.22号には、次の物品のみを含む。
⒜ フロントガラス(風防)、後部の窓及びその他の窓(枠付きのものに限る。)
⒝フロントガラス(風防)、後部の窓及びその他の窓(枠付きであるかないかを問わないものとし、加熱装置又はその他の電気的若しくは電子的装置を自蔵するものに限る。)
ただし、第87.01項から第87.05項までの自動車に専ら又は主として使用するものに限る。
第88類 航空機及び宇宙飛行体並びにこれらの部分品
⑯「無人航空機(ドローン)」
無人航空機(ドローン)およびその部分品は、第88類に含まれ、第95類の玩具には、ドローンが含まれないことが明確化された。
第88類 航空機及び宇宙飛行体並びにこれらの部分品
注
1 この類において、「無人航空機」とは、第 88.01 項の物品を除き、操縦士が搭乗せずに 飛ぶように設計した航空機をいう。無人航空機には、積載物を運搬するように設計した もの又は恒久的に組み込まれたデジタルカメラ若しくは飛行中に実用的機能を発揮可能 なその他の装置を装備したものを含む。ただし、無人航空機には、専ら娯楽用に設計された飛行する玩具を含まない(第95.03項参照)。
号注1 省略
2 第8806.21号から第8806.24号まで及び第8806.91号から第8806.94号までにおいて、「最大離陸重量」とは、その航空機が正常に離陸できる重量の最大値(積載物、装置及び燃料の重量を含む。)をいう
第95類 玩具、遊戯用品など
注
1 この類には、次の物品を含まない。
(a)~(o)省略
⒫ 無人航空機(第 88.06 項参照)
(q)~(x)省略