第59回通関士試験 片山立志先生の総評

通関士絶対合格通信講座

受講生の皆さんお疲れ様でした。マウンハーフジャパンの片山立志です。

今回の第59回通関士試験についてお話をしたいと思います。

全体総評

今回の試験は全体的に例年と同水準だったと思います。科目別に大きく見てみますと、一科目の通関業法については、例年並みの難易度であったと思われます。二科目目の関税法、関税定率法などについては、難易度が高かったと思われます。また最後の実務科目については例年並みの難易度であったと思われます。特に申告に関する問題については、練習を重ねた受験生の方にとっては、比較的容易に解ける問題であったと思います。

また、全ての科目で選択式の問題の難易度は、少し上がったと感じました。反面、択一式は、例年通りと言えましょう。

通関業法

通関業法については、従来から基本通達から出題されることが多く、今回も通達からいくつかの問題が出題されています。


 選択式第1問の問題も「業として通関業務を行う」の意義が出題されています。この中で、最後の「通関業務が他の業務に( ホ 付随)して無償で行われる」の選択肢は基本通達を読んでいない場合にはなかなか答えにくいものだったと思います。

また、第2問目には欠格事由の問題として「暴力団員等によりその事業活動を支配されている者」の意義が通達にどのように規定されているかが問われるものでした。これも基本通達を読んでいない場合には、なかなか答えにくい問題ではなかったでしょうか?

その他、第7問にあるように「通関業の経営の基礎が確実であることの基準の問題」で、繰越欠損金がある場合について問われていました。これも基本通達を読んでいないとなかなか答えにくいものだったと思います。これらの問題は、ある意味勉強をして身に付けた勘により解答を導き出されたのではないでしょうか?

しかし、他の部分については、引っかけ問題もあるもののこれまでの学習により比較的容易に解答が導き出されたのではないでしょうか?例えば「法人である通関業者が合併により解散し、その通関業の許可が消滅した場合には、清算人が遅滞なく、その旨を財務大臣に届けなければならない」というような問題、つまり届出義務者を正確に覚えているかどうかと言う問題がほとんどです。ちなみに、この問題は誤りです。ですから、正確に論点を覚えている方にとってみれば、解きやすい問題が多く出題されていたと思います。

もう一つ、第20問についても、「業法上違反行為を行った場合でも罰則が規定されていないもの」をしっかりと把握していれば、解きやすい問題であったと思われます。

このように通関業法は、論点をしっかり押さえて試験に臨んだ受験生の方々にとってみれば、基本通達上のわからない問題があったとしても、それ以外のものについてはほとんど正解されたのではないかと思います。

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関税法等

語群選択式

今年のこの科目は、第1問にいきなり還付加算金の問題が出題され、面食らった方もいらっしゃると思います。これまで還付加算金について、ここまで掘り下げた問題は出題されていませんでした。したがって見た瞬間、驚き頭の中がパニックになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、そうなっては相手の思うツボです。このような場合はまずは置いておいて、後からじっくりと解くのが合理的だと思います。実際に後からじっくり問題を見ていくことにより、全問正解された方も少なくはありません。

また、第5問の課税価格の決定の原則の問題では、輸入取引の意義、現実に支払われたまたは支払われるべき価格の意義が通達上どのように定められているかを問う問題が出されました。この問題もよく検討すれば、基本通達をたとえ読んでいなくても答えが導き出されると思います。

残りの語群選択の問題については、例年通りの内容であったと思います。なお、第2問の肢4については、法改正のあった特例輸入者の納期限の延長から出題されています。

選択式

今年の問題の第6問目から15問目までの問題には、難易度が高いものが含まれていました。各問題に受験生の方が選択を迷う問題がいくつか仕込まれていました。

中でも、第7問の肢2では、国税徴収の例による関税の徴収についての問題が出ていますが、第8問についても国税徴収の例とは書かれていませんが、肢3と肢4には国税徴収の例についての問題が出されています。

一定の事実が生じた場合に直ちに徴収するものとされている関税について完納されない場合は、督促なしに差押えがされることを理解しているかが問われています。これは国税通則法の規定からの出題です。

また、変質、損傷の場合の戻し税が、これを受ける者の誤った申告に基づいて過大な額で行われた場合には、国税徴収の例により、払い戻された過大な額を国は取り戻すことになります。当該問題は、関税法13条の2の条文通りの問題です。

最近の傾向として国税徴収の例による問題が出題される回数が多いようです。

また、第10問は、個人輸入の水際取締りについて肢3と肢4で問われました。関税法69条の11第2項(輸入してはならない貨物)は、意匠権には適用がありますが、特許権には、適用がありません。

第11問の肢2、第12問の肢4、第13問の肢2は、特に迷われた方も多かったのではないかと思います。いずれも誤りです。

択一式

択一式については、選択式と異なり、今年は解きやすかったと思われます。また今年は0解答がありませんでした。第16問から第30問までの解答を示すとほぼ過去問ベースのものです。ちなみに、解答となる問題を見てみましょう。

【第16問】 「期限後特例申告について、納付すべき税額に不足額がある場合、修正申告は、税関長の更正があるまでの間行うことができる。」正しい。

【第17問】 「本邦から出国する旅客の携帯品の輸出申告は、貨物の種類に関わらず、口頭で行うことができる。」誤り。

【第18問】 「他法令の規定により輸入に関し、許可承認等を必要とする貨物について、貨物の引き取りを急ぐ場合でも許可承認等を受けるまではBP承認を受けることができない。」正しい。

【第19問】 「本邦に到着した外国貿易船に積まれていた外国貨物で引き続き外国貿易船によりまたは他の外国貿易船に積み替えられて運送されるものについては、保税運送の承認を受けることを要しない。」正しい

【第20問】 「特例輸入者及び特定輸出者は、指定地外検査を受ける場合には届け出で良い。」誤り。

【第21問】 「通関手帳により物品を輸入した者が関税の徴収をされることとなった時は、輸入国の保証団体は当該輸入をした者と、連帯して納税義務を負う。」正しい

【第22問】 「特恵原産地証明書の様式については、便宜の様式で良い。」誤り、これは関税暫定措置法施行規則に様式が定められている。

【第23問】 「輸入貨物が買手の所有する船舶により運送された場合、当該船舶の減価償却費に燃料費等の費を加えた額が運賃となるが、その額に当該運送の状況を勘案し、通常必要とされる費用の額を著しく超える費用の額があるときであっても当該運賃から当該著しく超える費用の額を控除することはできない。」誤り、これは基本通達からの問題。

【第24問】 「税関長は特に必要があると認めるときは、1月以内において経済産業大臣の輸入承認の有効期間を延長することができる。」正しい。

【第25問】 「財務大臣は審査請求が不適法であり、却下する時であっても、関税等不服審査会に諮問しなければならない。」誤り

【第26問】 「重大な過失により無許可で保税地域にある外国貨物を日本として一時持ち出したものは罰せられることがある。」正しい

【第27問】 「通関業法第22条第3項の規定による定期報告書は、電子情報処理組織(NACCS)を使用して行うことができない。」誤り。

【第28問】 「風俗を害すべき物品及び児童ポルノである旨を通知された者(輸入しようとする者)は、自発的に関税法75条の規定による積み戻しを行うことができる。」誤り。

【第29問】 「輸出差し止めに係る商標権侵害物品に該当するか否かについての認定手続きにおいて認定手続き開始の通知を受けた輸出者が当該通知を受けた日から起算して10日を経過する日までに輸出しようとする貨物が、当該物品に該当するか、否かについて、争い旨を記載した書面を提出しない場合には、当該税関長は輸出者に証拠を提出する機会を与えることを要しない。」誤り。この認定手続きの簡素化にかかる規定は、輸入してはならない貨物について規定されているもので、輸出してはならない貨物の認定手続きについては、かかる規定はない。

【第30問】 「当該供給国における消費に向けられる輸入貨物と、同種の貨物の通常の商取引における価格があり、かつ当該価格を正常価格として用いることが適当であると認められる時でも輸出のための販売価格を用いることとされている。」誤り。

このように、過去問ベースの問題、そしてその応用の問題が多く、また、過去問やテキストの記載からも推測出来ないとんでもない問題はありませんでした選択式に比べ解きやすかったと思われます。

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通関実務

申告書問題

オーソドックスな良い問題でした。努力を重ねた受験生の方々は、報われたと思います。満点の方も多かったのではないでしょうか。

計算式

第9問でこれまでにない形の問題が出題されましたが、受験勉強をきちんとされている受験生の方にとってみれば、それほど難易度の高い問題ではなかったと思います。過少申告加算税の問題や課税価格の計算の問題については例年通りの難易度だったと思われ、満点を取った受験生の方も多かったのではないでしょうか。

択一式

例年通りの難易度だと思います。ただし、第16問の関税率表の類に関する問題は、難易度は高かったと思います

関税率表の類に関する問題以外では、輸出通関、輸入通関貨物及び経済連携協定に基づく締約国原産地であることの認定に関する問題がそれぞれ出題されており、特に商標権侵害疑義がある場合の税関長の執る手続きや、輸入貨物が異なる都道府県に所在する複数の保税地域に分散して置かれている場合まとめて一の輸入申告による申告ができないことを選択させるものについては、確実に答えるべき問題であると考えます。

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