片山立志先生の科目別総評

片山立志先生

10月4日の通関士国家試験を受験された皆様、ご苦労様でした。

1日かけての試験は、なかなか疲れるものです。しかし、合格点をとれた時は、気分爽快です。

今、合格点といいましたが、おそらく合格点の調整はせず、各科目、基準点である60%が合格点となると予想されます。いくつかの問題の中では、〇か×か迷う問題もありますが、全体としてリーゾナブルな問題で、必死に勉強された方は、報われる良い問題だったと言えます。

通関業法

通関業法は、例年と同様、テキストで基本事項を勉強し、過去問を学習することにより比較的容易に合格点を取ることができる問題でした。

また、通関士や通関業務の従業者の在宅勤務についての問題が初めて出されましたが、常識の範囲内の問題だったため、正解された方も多かったのではないでしょうか。

そして、おそらく、満点近い点を取られた方もいらっしゃるでしょう。

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関税法等

この科目も例年のように判断に迷う問題が出題されています。しかし、それが間違えたとしても合否にはあまり関係ありません。

全体から見れば、テキストを読み、過去問を学習することにより合格点をとることができる問題です。ただ、もちろん、通関業法より学習する情報量は多いので、「比較的容易に」とはいえません。

条文の中身を単に知っているではなく、国語の読解力を試す問題も出ています。知っているのだけど読み取る力がないと正解を導き出せないような問題です。重要なのは、冷静に試験問題を解けるかなのです。

「特例申告をしようとする者が、その特例申告書の提出期限及び当該特例申告書に記載された納付すべき期限に関し、その延長を受けたい旨の申請書をその特例申告に係る貨物の輸入の許可をした税関長に提出し、かつ、当該特例申告書に記載された納付すべき関税額の全額に相当する額の担保を当該税関長に提出したときは、当該税関長は、これらの期限を2月以内に限り延長することができる。」(第20問4肢)という問題ですが、一見すると正しく見えます。問題のように、特例申告書に記載された納付すべき期限は、2月以内に限り延長できます。

しかし、肢を読むと気になるところがありました。最後に「これらの期限」を2月以内に限りと書かれています。

「これらの期限」なのです。文を読み返すと、「特例申告書の提出期限」と「納付すべき期限」の二つの期限が延長できる。というようにとらえることができます。「特例申告書の提出期限」の延長は、できません。「納付すべき期限」のみ延長できるのです。ですから、誤りと判断しました。

なお、もっと言えば、担保は、「関税額の全部」でなく「一部」でもいいのです。

よくよく読んでみますと、出題者は、「これらの期限」に気付いたかを聞きたかったのではないかと推測します。

これは、もう国語の試験です。知っていても、読み飛ばしてしまう意地悪な問題だと言えるでしょう。

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通関実務

申告書問題

問題自体、奇をてらうものではなく、良い問題が出題されています。

輸出申告書

大変解きやすい問題と思ってしまいますが、やはり、権威ある国家試験です。

大きな落とし穴が潜んでいます。

輸出統計品目表の注をきちんと読み解き、解答を導き出せるかがポイントです。

おそらく、正解した方とそうではない方が大きく割れる結果になるのではと予測しています。ということは、満点あるいは、それに近い方も多いのではないかと推測します。

輸入申告書

この輸入申告書は、例年に比べ解きやすい問題だったと思います。高得点の方も多かったと推測します。

計算式その他

実務試験で関税、消費税、地方消費税の計算問題が久しぶりに出題されました。

ひと時代前の通関士試験では、輸入申告書作成の問題がありました。作成するにあたっては、関税、消費税、地方消費税の計算ができないといけないので、今年のこのような計算問題は、当時は、申告書問題で毎年のように問われていたものです。

テキストにも出ているものですが、最近出題が全くなかったので少々戸惑われたのではないかと思います。

また、課税価格の計算問題も例年通りの難易度でした。

この実務も類の記憶も含め、テキストと過去問をしっかりと理解し学習することにより合格点を得ることができたと思います。

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