片山立志先生の科目別総評

今回は、片山立志先生に試験の総評をお伺いしました。

全体の印象は、例年通りのレベルで内容も奇をてらうような問題は、なく、努力が実る試験だったと思います。今年は、輸出申告の問題が一番難関であったと思います。

科目別総評をご覧ください。

通関業法

通関業法は、例年のように行政解釈(通達)からの出題もいくつかありましたが、全体として解きやすい問題だったと思います。法令をしっかり学習されている方にとっては、合格点は、容易に達成していると思います。

穴埋め選択式は、全問正解すべき問題です。

選択式及び択一式は、ところどころ、行政解釈(通達)を問う問題も出ています。

例えば第6問には、「許可申請者がその人的構成に照らして、その行おうとする通関業務を適正に遂行することができる能力を有することに適合するかどうかを審査しなければならない。」の「人的構成に照らし」の行政解釈を問うようなものです。

行政解釈の問題は、一般に常識的な問題が多く、いってみれば「当たり前」のものがおおいのです。ですから、恐れる必要はなく、あくまでも通関業法、同法施行令などの法令をしっかり押さえることが「重要」ということを再認識できました。また、行政解釈を聞く同じ問題が繰り返し出題されていない傾向があります。

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関税法等

関税法などの科目については、一部、一般的な知識では、解けない問題がありましたが、仮にできなくても合否にかかわるほどのものではありませんでした。全体的に例年通りのレベルであったと言えるでしょう。

穴埋め選択式

今年の問題では、テキストにもほとんど載っていない「日本国とアメリカ合衆国との相互協力及び安全保障条約」に基づく関税の免税について出題されました。韓国のGSOMIA廃止問題を意識したのでしょうか。国語の文章完成の穴埋め問題の感覚で皆さん解かれたと思います。これまでの範囲以外からの問題ですが、最低でも2,3個は、うめられたでしょう。

例えば、合衆国軍隊の( ロ )が発給した証明書を~ とくれば、権限のない者の証明書などは意味がないので、「権限ある官憲」が入ると判断できるでしょう。

また、「関税率表の解釈に関する通則」通則5からも出題されています。これは、これまでも出題されているところではあるものの、盲点を突いたと思われる方も多いと思います。もちろん、重要な論点からの出題です。もっとも、(a)の部分は、できた方は、多いと思いますが、(b)の部分がうまく答えられなかった方が多い印象です。そうすると、5つのうち3つは、答えられるということになりますね。

このようにみると、穴埋め選択式全体で7~8割以上は、点数にしたいものです

選択式&択一式

全体に基礎力を聞く問題ばかりで、努力された方は、よい得点を獲得したのではないかと思います。

通達の規定に関する問題ではあるのですが、基礎力をつけていれば、勘が働き判断できる問題もあります。

たとえば、第7問の3の選択肢は、特定輸出者の特定輸出貨物に係る輸出許可の取消しの申請手続きですが、この手続きは「輸出申告撤回申出書」によるという問題です。これは、通達からの出題なのですが、問題文から輸入許可を受けた後で輸入申告の撤回ができるのかと疑問に思ってほしいのです。通達では、「特例輸出貨物の輸出許可取消申請書」を使用すると規定されています。たとえ、この申請書の名前を知らなくても基礎力で乗り切ることができる問題なのです。

同様に択一式である第20問においても輸入申告と合わせて納税申告を行った場合において輸入の許可までにこれらの申告の撤回を申し出たときは、その理由の内容にかかわらず、これらの申告の撤回が求められるという肢が出題されています。この肢が誤りの該当し、問題20問の正解です。これも通達ベースの問題で、迷った方も多いと思います。しかし、「理由の内容にかかわらず」という答えのシグナルを見逃さないのがテクニックです。実は、この問題、この肢以外の問題は、容易に答えられる問題であることから、この肢が答なのか、「0」解答なのか迷うことになるでしょう。そこで、「理由の内容にかかわらず」撤回が認められるかを判断することになるのです。そして、輸入許可前貨物の引取り承認された貨物に係る輸入(納税)申告は、原則として撤回は、認められないことを思い出せば正解は導き出せます。

つぎに、受験生の方に難しく感じられたのが、第19問延滞税についての4と5の肢の延滞税の免除に関する問題だったと思います。

しかし、これら問題は、関税法の条文通りの問題です。関税法12条で規定する延滞税の免除は、読みにくい条文が多くありますので、それが難しいと感じあまり勉強されなかった方もいらっしゃったようです。答えは、「災害により関税を納付すべき期間が延長された時は、その関税に係る延滞税は、延長した期間免除される。」が正解です。

実は、延滞税の免除に関しては、今回、政令が改正され要注意の場所でしたが、改正部分からの出題ではなく、これまでの規定から出題されていました。

延滞税については、今後も出題されるでしょう。

第28問の罰則については、法改正からの出題です。

他の多くの問題は、納税義務者の問題、輸入してはならない貨物、輸出してはならない貨物、課税価格の計算、輸出貿易管理令、輸入貿易管理令など過去に繰り返し出題された多く、過去問を繰り返し学習し、基礎力をつけた方にとっては、努力が実ったと思います。

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通関実務

輸出申告

今年の輸出申告の一部のものについては、品目分類は、難関というより迷わせる問題だったと思います。

ただし、Green tea powder、 Fresh tomato juice、 Frozen concentrated grapefruit juice の物品については、注をきちんと参照する必要なものもありますが、過去問で鍛えていれば比較的容易に分類できることから、それらが確実に分類できれば6割は行けた方も多いでしょう。しかし、そうはいっても、家では、できるが、試験会場では、気も焦り、緊張していますから難しい分類が含まれると手が出なくなってしまう危険があります。

輸入申告

分類そのものは、輸出申告に比べ楽だったと思いますが、そうはいっても輸入品目の商品知識のない受験生にとっては、正解を出すまで分類に時間がかかったことでしょう。

たとえば、Lubricating preparation が潤滑製剤のことを言っていることが分かっていれば、34.03 にすぐたどり着きますが、わかっていないと、時間がかかります。たどり着けば、petroleum oil の割合で分類がすぐできます。

もっともシャンプーやヘアーグリースなどは、スムーズに分類できたと思います。

そして、課税価格の算出は、単純なものでしたので、本邦通貨の換算の計算ミスさえなければ問題なく解答できたと思います。

選択式、計算式、択一式

全体的にみると例年のレベルだと思います。

ただし、第15問は、難しい問題だったと思います。

TPP11関連の問題もいくつか出題されています。

第3問では、関税暫定措置法で新設されたTPP11の場合の更正の請求の特例(輸入の許可の日から1年に限り行うことができるという特例規定)が出題されています。5年以内とあるので誤りです。これも予想の範囲です。

第17問にTPP11の原産地手続について基本的な問題が出題されていますが、受験生の方々も予想されていた範囲でしたので、容易に解答できたと思います。一方、EU協定は、出題されませんでした。しかし、この問題のTPP11をEU協定に置き換えれば問題が成立します。つまり、共通事項についての出題でした。

次に、特恵関税の原産地規則、2国間の経済連携協定の原産地規則(品目別原産地規則:関税分類変更規則)について今年も出題されています。この傾向は、続くでしょう。

計算式問題は、すべて平易な問題で単純ミスがない限り得点源になったと思います。課税価格の計算の問題も過去の問題に類似する問題で難易度もそれほど高くなかったと思います。

実務試験は、1時間半の勝負です。いくら平易な問題でも、申告書2題を含め、解答する量は、多いです。得点源になる問題を確実に解くことは、時間との戦いです。時間が足らなくならないように、時間配分もとても重要です。知っていても時間内に解答できなければ、得点にはなりません。

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